もともと頚部痛・腰痛・ヘルニアがある(既往症)と交通事故の慰謝料は減る?「素因減額」を解説

交通事故で追突され、首や腰に激しい痛みが走ったため病院でMRI検査を受けたところ、医師から「もともとヘルニア(または頚椎・腰椎の変形)があったみたいですね」と言われることがあります。

このような場合、しばらく治療を続けていると、相手方の保険会社から以下のように言われることがよくあります。

「痛みが長引いているのは、交通事故のせいではなく、もともと持っていたヘルニア(既往症)が原因です。ですので、治療費の支払いは今月で終了とさせていただきます。また、もともとの病気が原因なので、慰謝料も減額(素因減額)させていただきます。」

痛みに苦しんでいる被害者からすれば、「事故に遭う前は普通に生活できていたのに、すべて事故のせいに決まっているじゃないか!」と強い怒りと理不尽さを感じるはずです。

確かに、法律上「素因減額(そいんげんがく)」という賠償金を減額する考え方は存在します。しかし、保険会社の言いなりになって安易に減額を受け入れてしまうと、本来受け取れるはずの賠償金から数十万円〜数百万円も損をしてしまう危険性があります。

この記事では、広島で交通事故問題に注力する弁護士が、「素因減額とは何か」「もともとヘルニアや腰痛がある人は本当に慰謝料が減るのか」「保険会社の理不尽な主張にどう反論すべきか」について解説します。既往症を理由に保険会社とトラブルになっている方は、ぜひ最後までお読みください。

目次

1. 「素因減額(そいんげんがく)」とは?基礎知識を解説

示談交渉で保険会社から送られてくる書類に「素因減額 〇%」と記載されていることがあります。まずは、この「素因減額」という言葉の法的な意味を正しく理解しておきましょう。

1-1. 素因減額とは

素因減額とは、「交通事故の被害者がもともと持っていた身体的な特徴や病気(素因)が原因で、ケガが重症化したり、治療期間が長引いたりした場合(つまり、損害の発生・拡大に寄与した場合)、その素因が影響した割合に応じて、加害者が支払う損害賠償額(慰謝料や治療費など)を減額する」という考え方です。

素因減額は、過失相殺の規定と同様に、「損害の公平な分担」という観点から判例で認められています。 加害者は、当然「自分が起こした交通事故が原因で生じた損害」については100%賠償する責任があります。しかし、「被害者がもともと持っていた病気」によって損害が拡大した部分まで加害者に全額負担させるのは、かえって不公平になるのではないか、という考え方が素因減額の根拠です。

1-2. 「体質的・身体的素因」と「心因的素因」

素因減額の対象となる「素因(そいん)」には、大きく分けて以下の2種類があります。

ざっくりと分けると「体の問題」と「心の問題」と言えます。

2. 既往症(もともとの病気)と交通事故の関係

「もともと腰痛やヘルニアがある」といっても、事故に遭う前の被害者の状態によって、素因減額が認められやすいケースと、認められない(反論できる)ケースに分かれます。

2-1. 事故前からヘルニアや腰痛で「治療中」だった場合

交通事故に遭う直前まで、まさにその腰痛やヘルニアで整形外科や整骨院に頻繁に通院し、治療を継続していたような場合です。

この場合、事故による強い衝撃を受けたことで「もともとあった症状がさらに悪化した(増悪した)」と判断される可能性が高くなります。被害者としては納得できない部分もあるかもしれませんが、客観的な通院履歴やカルテが存在するため、事故後の痛みのうち何割かは「もともとのヘルニアによるものだ」として、一定の素因減額(例:10%〜30%程度の減額)が認められる可能性が高いケースと言えます。

2-2. 事故前は無症状だったが、MRIで「変形」が見つかった場合

実務上、最もトラブルになりやすいのがこのケースです。

被害者本人は、事故前は首や腰にまったく痛みを感じておらず、病院にも通わず元気に仕事や生活をしていました。しかし、交通事故に遭って初めて病院でMRIを撮ったところ、医師から「腰椎椎間板ヘルニアの所見がありますね」「年齢による骨の変形(退行性病変)があります」と指摘されるケースです。

このような「本人は気づいていなかったが、画像上は所見がある(無症候性の既往症)」場合、保険会社は「画像にヘルニアが写っているのだから素因減額すべきだ」と主張してきますが、適切な反論を行えば素因減額はされない(減額させない)可能性が十分にあります。詳しくは後ほど(第4章)解説します。

2-3. 保険会社が「素因減額」を主張しやすい主な疾患

保険会社が、むち打ちの被害者に対して、賠償金を低くする口実としてよく指摘する疾患・病態には以下のものがあります。

3. 保険会社は「素因減額」を賠償金を低くするための口実にすることも

被害者が首や腰の痛みを訴え、MRIの画像所見として、診断書に上記のような疾患名や「変性あり」という記載があった瞬間、相手方の保険会社は素因減額を主張する材料があると考えます。保険会社は、「素因減額」というカードを使って、賠償金を低くしようとします。

3-1. 治療費の早期打ち切り(一括対応解除)の理由にされる

むち打ちの治療期間の目安は一般的に3ヶ月〜6ヶ月程度ですが、被害者にヘルニアなどの所見がある場合、保険会社は「事故からわずか1〜3ヶ月」で治療費の支払いを打ち切ってくることがあります。

「今の痛みは交通事故のむち打ちではなく、ヘルニアの痛みですから、ご自身の健康保険で勝手に治療してください」と突き放されるのです。痛みが強く残っている被害者にとって、治療費の打ち切りは死活問題となります。

3-2. 慰謝料や休業損害、逸失利益を大幅に減額される

治療が終了し、いざ示談交渉の段階になっても、保険会社の主張は続きます。 「入通院慰謝料」「仕事を休んだ分の休業損害」「後遺障害が残った場合の逸失利益」など、加害者に請求するすべての損害賠償金の総額から、「被害者様の素因(ヘルニア)割合として20%〜50%を減額します」と一方的に通告してきます。

仮に総損害額が500万円だった場合、50%の素因減額を適用されると、賠償金は250万円になってしまいます。保険会社の担当者は「過去の判例でも認められている正当な扱いです」と専門用語を並べて説得してくるため、被害者に知識がないと「そういうものなのか」と諦めて免責証書にサインをしてしまいがちです。

4. 単なる「加齢変化」だけでは素因減額の対象にはならない!

保険会社から「あなたの骨には加齢による変形(退行性病変)があるから、賠償金を減額します」と言われたとしても、そのまま受け入れてはいけません。

4-1. 年齢相応の身体の変化は「疾患」ではない

人間は誰しも、年齢を重ねれば首や腰の骨、椎間板にある程度の変形や変性が生じます。これは病気ではなく、白髪が生えたりシワができたりするのと同じ「自然な老化現象」です。

「自然な老化現象」なのに、素因減額が認められるのでしょうか。そうであれば、高齢者は常に賠償額を減額されてしまいます。

裁判例では、例えば既往症で椎間板ヘルニアがあったとしても、経年変化によるもので身体的特徴の範囲内といえるものであれば、素因減額は否定されています。

つまり「被害者が、年齢相応の骨の変形(頚椎の退行性病変など)を有していたとしても、それが一般的な加齢の範囲内にとどまるものであれば、素因減額の対象とはならない」と考えているのです。

「30代なら30代なりに、50代なら50代なりに、通常見られる程度の骨の変形」があるだけであれば、それは賠償金を減らす理由(疾患としての素因)にはならない、と多くの裁判例で認めているのです。保険会社は自社の支払いを減らすためにこの裁判例を無視して減額を主張してくることが多いため、被害者側から法的かつ医学的に反論することが極めて重要です。

4-2. 事故前に無症状であれば反論の余地は十分にある

前述の通り、MRI画像でヘルニアなどの所見が見つかったとしても、「事故に遭う前はまったく痛みがなく、日常生活や仕事(力仕事やスポーツなどを含む)を制限なくこなせていた」のであれば、それは「無症候性の変性」に過ぎません。

「もともと画像上の変形はあったかもしれないが、交通事故という強烈な外力が加わらなければ、痛み(症状)が発生することはなかった」と法的かつ医学的に主張することで、素因減額をゼロにする、あるいは最小限に抑えることが可能になります。

5. 素因減額を主張された!被害者が取るべき4つの反論ステップ

もし保険会社から「既往症」「ヘルニア」「年齢による変形」を理由に、治療費の打ち切りや賠償金の減額を突きつけられた場合、被害者としては速やかに以下のステップで反論の準備を行う必要があります。

ステップ①:主治医に「事故と痛みの因果関係」を確認する

最も重要なのは、医学の専門家である主治医の見解です。 次回の診察時に、「保険会社からヘルニアのせいだと言われて治療を打ち切られそうです。先生から見て、今の私の痛みは交通事故の衝撃によるものでしょうか?」とはっきりと質問してください。

もし主治医が「画像上ヘルニアはあるが、今回の痛みは事故の衝撃による急性症状(むち打ち等の外傷)である」と判断してくれれば、その旨を診断書等に記載してもらうことで、強い反論材料になります。

ステップ②:事故前に「無症状であったこと」の客観的証拠を集める

「事故前は痛くなかった」という口頭での主張だけでなく、客観的な事実(証拠)を集めます。

これらの事実を積み上げることで、「もともと病気だった」という保険会社の主張を崩します。

ステップ③:事故の衝撃(車両の破損状況)を証明する

「これほど激しい追突事故に遭えば、健康な人でも首や腰に重傷を負うのは当然である」と主張するために、事故の衝撃の大きさを証明します。

これらを用いて、既往症の有無に関わらず大きな損害が発生するレベルの事故であったことを客観的に示します。

ステップ④:交通事故に強い弁護士に交渉を依頼する

 保険会社は、素人である被害者が「判例では…」「因果関係が…」と主張しても、まともに取り合ってくれないことが多くあります。担当者は「当社の顧問医の見解では既往症が原因です」と、医療用語を使って強引に説き伏せようとするかもしれません。

対等に交渉するためには、法律と医学の両方の知識を武器に、保険会社と交渉できる「交通事故問題に精通した弁護士」に依頼することが重要になります。

6. 弁護士に依頼するメリット:医学と法律の両面から徹底反論

素因減額のトラブルにおいて、弁護士(法律事務所)に依頼すると、具体的にどのようなサポートをしてくれるのでしょうか。

6-1. 主治医への面談・医療照会と「意見書」の取得

弁護士は必要に応じて、被害者の主治医に対して「医師面談」を依頼したり、「医療照会(書面による医学的な質問)」を行ったりします。 「MRI画像の所見は、年齢相応の退行性病変にとどまるか」「事故前の無症状という事実を踏まえると、現在の症状は交通事故による外傷性のものか」といった、裁判で有利になる証拠作りという観点から質問を医師に投げかけます。

医師から「本件症状は交通事故によるもので、骨の変性は年相応である」という回答(医師の意見書)を得られれば、保険会社としては素因減額を強硬に主張し続けることが困難になります。

6-2. 裁判例に基づく論理的な交渉

交通事故に強い弁護士は「どのようなケースなら素因減額が認められ、どのようなケースなら素因減額を否定できるか」という方向性を過去の膨大な裁判例(データベース)から検討します。

保険会社が「ヘルニアだから30%減額だ」と主張してきたのに対し、弁護士は「本件と類似した〇〇地裁の〇年〇月〇日の裁判例によれば、無症候性のヘルニアを理由とした素因減額は否定されている。したがって御社の主張は法的に不当であり、100%の満額賠償を求める」と、論理的かつ毅然と反論し、適正な賠償金(弁護士基準での慰謝料)を獲得します。

7. 弁護士費用特約を使えば自己負担ゼロで依頼が可能

「弁護士に頼むと費用が高くて、結局損をするのでは?」と心配される方も多いですが、ご安心ください。ご自身やご家族が加入している自動車保険などに「弁護士費用特約」が付帯されていれば、費用倒れの心配はありません。

この特約を使えば、法律相談料、着手金、報酬金などの弁護士費用を最大300万円まで保険会社が代わりに支払ってくれます。 大半の交通事故事件において弁護士費用が300万円を超えることはないため、被害者の方は実質的な自己負担ゼロ(0円)で、保険会社との煩わしい交渉をすべて弁護士に丸投げすることができます。

特約を使っても自動車保険の等級が下がったり、翌年の保険料が上がったりする(ペナルティ)ことは一切ありませんので、使わなければ絶対に損をする特約です。

また、弁護士費用特約が使えない場合でも、ラグーンでは費用後払いで対応可能で、依頼時のご負担はありません。もし弁護士費用を払うことで現状よりも手取りが少なくなりそうなケースではご相談時にその見通しを十分に説明させていただきます。

8. まとめ:既往症を理由に減額されても泣き寝入りしない!広島の弁護士にご相談を

交通事故の被害者が、「もともと腰痛やヘルニアがある(既往症)」ことを理由に、保険会社から慰謝料や治療費を減額されそうになった場合の対処法について解説しました。

被害者の方は、事故による痛みだけでも辛いのに、「あなたの持病のせいだ」と保険会社から疑われ、責められることで、精神的に深く傷ついてしまいます。

当事務所では、広島の交通事故被害者の方々に寄り添い、理不尽に思える保険会社の「素因減額」の主張を否定し、交渉や裁判で適正な賠償金の支払いを受けた豊富な実績があります。

「もともとヘルニア持ちだったけど、事故でさらに痛くなった」 「保険会社から『年齢のせいだ』と言われて治療費を打ち切られた」 「示談書に素因減額30%と書かれているが、納得がいかない」

このようなお悩みを抱えている方は、示談書にサインをする前に、ぜひ当事務所の無料相談をご利用ください。あなたの思いを法的な主張に整理し、正当な賠償金の支払いがなされるよう全力でサポートいたします。

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