

交通事故に遭い、広島市内の病院や整形外科で、懸命に通院を続けてきた被害者の方。ある日突然、主治医から「そろそろ症状固定ですね」と言われたり、相手方の保険会社から「今月いっぱいで症状固定として、治療費の支払いを終了させてください」と打診されたりして、戸惑っていませんか?
「まだ首や腰に痛みが残っているのに、これ以上治療してもらえないの?」 「治療費が自己負担になるって本当?」 「これからどんな手続きをすればいいのか全く分からない」
このような不安を抱える方は非常に多くいらっしゃいます。 「症状固定(しょうじょうこてい)」とは、交通事故の損害賠償実務において、非常に重要な分岐点となるキーワードです。
このタイミングでの対応を誤ると、本来受け取れるはずの賠償金(慰謝料など)が大幅に減額されてしまったり、残ってしまった後遺症に対する適切な補償が得られなくなったりするリスクがあります。
本記事では、広島で交通事故被害に遭われた方に向けて、「症状固定」の正しい意味、症状固定になった場合に何が変わるのか、そして適切な賠償金を獲得するために被害者が次に取るべき具体的な手続きについて、弁護士が解説します。示談で損をしないための必須知識ですので、ぜひ最後までお読みください。
目次
1. 「症状固定」とは?正しい意味を理解しましょう
まずは、「症状固定」という言葉の意味を正しく理解しておきましょう。
1-1. 「これ以上治療しても改善が見込めない状態」のこと
症状固定とは、交通事故によるケガに対して「これ以上一般的な医学的治療を継続しても、症状の劇的な改善(回復)が見込めず、ほぼ状態が固定した状態」に達したことを指します。
つまり、「もうこれ以上病院に通ってリハビリや投薬を行っても、今残っている痛みや痺れ(しびれ)は良くならないだろう」と医学的に判断された状態です。
1-2. 「治癒(完治)」とは異なる
多くの方が誤解されがちですが、「症状固定」は「治癒(完治)」とは異なります。
治癒(完治)は、ケガがすっかり治り、痛みも後遺症も何一つ残っていない状態です。一方、症状固定は「痛みや不具合が残ったまま、それ以上良くならない状態」を含みます。 ケガが完治することは多くの被害者が望んでいることであり、一番良いのですが、むち打ち(頸椎捻挫)や骨折などの場合、残念ながら痛みが残ってしまうケースは多々あります。この「残ってしまった症状」のことを、「後遺症」と呼びます。
1-3. 症状固定を判断するのは「保険会社」ではなく「主治医」
実務上よくあるトラブルが、相手方の保険会社の担当者から「事故から半年経ったので、そろそろ症状固定にしてください」と一方的に打診されるケースです。
しかし、症状固定の時期を判断できるのは、医学的な専門知識を持ち、あなたの経過を診てきた「主治医(医師)」です。 保険会社はあくまで内部的な基準や顧問医の見解を基に、症状固定を打診してきているに過ぎません。保険会社から言われたからといって、ご自身がまだ痛みを感じ、主治医も治療の継続が必要(つまり、治療による改善効果が期待できる状態)だと考えているのであれば、安易に同意する必要はありません。
2. 症状固定になるとどうなる?何が変わるのか
主治医によって「症状固定」と診断された日を境に、以下の3つの大きな変化があります。
2-1. 変化①:相手方保険会社からの「治療費の支払い」が打ち切られる
症状固定とは「これ以上治療しても良くならない状態」であるため、法的には「症状固定日以降に行われる治療は、交通事故と因果関係のある必要かつ相当な治療ではない」とみなされます。
そのため、症状固定日を境に、相手方の保険会社が直接病院に支払っていた治療費(一括対応)はストップ(打ち切り)となるのが通常です。 もし、症状固定後も痛みを和らげるために通院を続けたい場合は、ご自身の「健康保険」を使って、窓口で治療費を自己負担する必要があります。
2-2. 変化②:傷害慰謝料と休業損害の計算期間が「終了」する
交通事故の賠償金として支払われる「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」や「休業損害(仕事を休んだ補償)」は、「事故日から症状固定日までの期間」を対象として計算されます。
つまり、症状固定と診断された時点で、傷害慰謝料と休業損害のカウントはストップします。仮に症状固定後に自費で通院したとしても、その期間は慰謝料や休業損害の対象にはなりません。 また、病院への通院交通費の支払いも、原則として症状固定日で終了となります。
2-3. 変化③:「後遺障害等級認定」の申請手続きを検討する
症状固定となっても、痛みや痺れなどの症状が残っている場合、被害者はただ泣き寝入りするわけではありません。「後遺障害等級認定(こういしょうがいとうきゅうにんてい)」の申請手続きを検討します。
残ってしまった症状が、自賠責保険の定める「後遺障害」に該当すると認定されれば、これまでの入通院慰謝料とは別枠で、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益(将来の収入減少に対する補償)」を請求できるようになります。 症状固定の診断は、この後遺障害申請のスタートラインに立つことを意味します。
3. 保険会社から「症状固定(治療の打ち切り)」を打診された場合の対処法
保険会社から「そろそろ治療を終了して症状固定にしませんか」と打診された場合、どのように対応すべきかを解説します。
3-1. まだ痛みが強く、治療を続けたい場合
前述の通り、判断するのは主治医です。まずは主治医に「保険会社から治療の終了を打診されたが、まだ痛みが強い。医学的に見てまだ治療の効果(改善の余地)はあるか?」と相談してください。
主治医が「まだ治療を続ければ良くなる」と判断した場合、医師から保険会社にその旨を伝えてもらうか、ご自身で伝える(場合によっては診断書を作成してもらって保険会社へ提出する)ことで、治療期間(治療費の支払い期間)を延長できる可能性があります。
3-2. 保険会社が強引に治療費を打ち切ってきた場合
医師が治療の継続を求めているにも関わらず、保険会社が自社の規定を理由に、一方的に治療費の支払いを打ち切ってくる(一括対応の解除)ことも少なくありません。むち打ちの場合は、事故から3ヶ月〜5ヶ月程度で打ち切られるケースが目立ちます。
この場合、基本的に保険会社が払わないからという理由だけで治療を中止することは避けるべきです。 特に、むちうち等で後遺障害の認定手続きをする場合、治療期間が6ヶ月未満ですと、「将来も残る痛みであるのか分からない」という理由で、門前払いされ、後遺障害の認定がなされない可能性が極めて高くなります。
また、保険会社が4ヶ月~5ヶ月の段階で「症状固定にして、あとは後遺障害の申請をしてみましょう」と提案してきても、応じないでください。前述のとおり、この段階で後遺障害の申請をしても認定される可能性は低いです。
弁護士に相談をして「被害者請求」(自賠責保険へ治療費の請求をすること)の手続を取るか、自己負担になってでも、ご自身の「健康保険」に切り替えて(病院に「第三者行為による傷病届」を提出して)、通院を継続することを検討してください。 一旦立て替えた治療費は、後日示談交渉の際に「必要な治療であった」と認められれば、相手方に請求することが可能です。痛みを我慢して通院をやめてしまうと、「その時点で治った(=症状固定になった)」とみなされてしまい、後遺障害の認定も受けられなくなってしまいます。
4. 症状固定と言われたら?広島の被害者が取るべき4つのステップ
主治医と相談した結果、医学的にも「症状固定」とするのが妥当であると決まった場合、速やかに以下のステップで行動を開始しましょう。
ステップ1:後遺症の自覚症状を整理する
まずはご自身の身体に、どのような自覚症状が残っているかを正確に整理します。 「首の右側が常に痛い」「雨の日に左手に痺れが出る」「肩が上がらなくなった」など、些細なことでもすべてメモに書き出してください。これを医師に漏れなく伝えることが、非常に重要になります。
ステップ2:主治医に「後遺障害診断書」の作成を依頼する
残った症状について後遺障害等級認定を受けるためには、専用の診断書である「自動車損害賠償責任保険 後遺障害診断書」を主治医に作成してもらう必要があります。この用紙は保険会社から送ってもらうか、弁護士経由で入手します。
【注意点】後遺障害診断書の書き方次第で結果が変わることがあります。 後遺障害の審査は、原則として「書面審査」で行われます。審査機関の担当者が直接あなたの身体を診ることはありません。そのため、提出する後遺障害診断書に「どのような症状が、どの程度残っているか」が医学的に正確かつ具体的に記載されているかがすべてを左右します。 「患者が痛いと言っている」程度の曖昧な記載では、後遺障害として認められない可能性が高いのです。
ステップ3:必要な検査(MRIなど)に漏れがないか確認する
後遺障害を証明するためには、自覚症状だけでなく、それを裏付ける「客観的な画像所見(MRIやレントゲン、CTなど)」や「神経学的検査の結果」が必須です。
むち打ちで神経が圧迫されている疑いがあるならMRI画像が必要ですし、関節の動く範囲が狭くなったなら可動域の測定が必要です。症状固定のタイミングで、必要な検査がすべて実施され、その結果が診断書に記載されているかを必ず確認してください。これらの検査は、「医学的に必要であるから当然実施する」とは限りません。そのため、医師から「この検査をやっておきましょう」と網羅的に提案されるわけではありません。あくまで「自賠責保険」の認定にあたって必要な検査として、漏れなく、かつ正確に実施してもらう必要があります。
ステップ4:診断書を提出する前に「弁護士」に相談する
出来上がった後遺障害診断書を、そのまま相手方の保険会社に渡してしまうだけでは不十分です。記載内容に不備や不足があっても、保険会社はそれを指摘してくれません。そのまま審査に出され、「非該当(後遺障害なし)」という残念な結果になってしまうケースは多く存在します。
主治医は「ケガを治すプロ」ですが、「後遺障害認定手続きのプロ」ではありません。診断書が完成したら、保険会社へ提出する前に、交通事故問題に精通した弁護士に内容をチェックしてもらうことを強くお勧めします。必要であれば、弁護士から医師へ記載の修正や追記をお願いすることも可能です。
5. 後遺障害等級認定の2つの申請方法(事前認定と被害者請求)
後遺障害診断書が準備できたら、審査機関(損害保険料率算出機構)へ申請を行います。申請方法には大きく分けて「事前認定」と「被害者請求」の2種類があり、どちらを選ぶかで認定結果に違いが出る可能性があります。
5-1. 事前認定(相手方の保険会社に任せる方法)
加害者が加入している任意保険会社に、後遺障害診断書を預けて、手続きをすべて任せる方法です。
- メリット: 被害者自身は後遺障害診断書を渡すだけで済むため、手間や時間がかかりません。
- デメリット: 保険会社は「最低限の書類」しか審査機関に提出しません。また、審査に有利になるような追加資料(医師の意見書など)を自発的に集めてくれることはありません。逆に不利になる追加資料(顧問医の意見書など)を添付することさえありえます。結果として、本来認定されるべき等級が認定されない(非該当になる、低い等級が認定される)リスクが高まります。また、認定されたときに自賠責保険からの一時金が払われるわけではありません。
5-2. 被害者請求(自分で直接申請する方法)
相手方の保険会社を通さず、被害者自身が加害者の「自賠責保険」に対して直接書類を提出して申請する方法です。
- メリット: 後遺障害診断書だけでなく、症状を裏付けるための「有利な証拠(MRI画像、主治医の意見書、日々の痛みを綴った陳述書、事故車両の破損写真など)」を被害者側で準備して添付できるため、適切な等級が認定される確率を高めることができます。また、後遺障害が認定された場合、等級に応じて、自賠責保険から保険金が支払われます。
- デメリット: 収集すべき書類が多く(交通事故証明書、事故発生状況報告書、診療報酬明細書など)あり、専門知識のない被害者個人で行うには非常に大きな労力と時間がかかります。
結論としては、 弁護士に依頼して「被害者請求」を行うのが確実な選択になります。 後遺障害の適切な認定を目指すなら、「被害者請求」一択と言っても過言ではありません。しかし、手続きが煩雑なため、「弁護士に依頼して、被害者請求の手続きをすべて代行してもらう」のが最も確実かつ被害者の負担がない方法です。 広島で多くの交通事故事案を扱ってきた法律事務所であれば、地元の病院の特性にも精通しているはずで、よりスムーズな対応が可能です。
6. 症状固定後に請求できる「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」
無事に後遺障害等級(1級〜14級)が認定されると、これまでの「入通院慰謝料」「休業損害」とは別に、以下の2つの大きな賠償金を請求できるようになります。
6-1. 後遺障害慰謝料
後遺症が残ってしまったことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。等級に応じて金額の目安が決まっています。
ここでも、保険会社が提示する「自賠責基準・任意保険基準」と、弁護士が交渉する「弁護士基準(裁判所基準)」では、金額に大きな差が生じます。
【例:後遺障害14級(むち打ちなど)の場合】
- 自賠責基準:32万円
- 弁護士基準:110万円(約3倍強の増額)
【例:後遺障害12級(局部に頑固な神経症状を残すものなど)の場合】
- 自賠責基準:94万円
- 弁護士基準:290万円(約3倍強の増額)
弁護士が介入し適切な主張をすることで、後遺障害慰謝料だけでも数十万円から数百万円単位で賠償金が増額するケースが非常に多いのです。
6-2. 逸失利益(いっしつりえき)
後遺症が残ったことで労働能力が低下し、将来にわたって得られるはずだったのに失われてしまった収入のことです。
「基礎収入(事故前の年収)× 労働能力喪失率(等級で決まる)× 労働能力喪失期間(通常は症状固定時の年齢から67歳になるまでの期間)に対応するライプニッツ係数」という複雑な計算式で算出されます。
保険会社は、この逸失利益を極力低く見積もって提示してくる傾向があります。特に、専業主婦の方や、事故後も減給されずに働いている会社員の方に対しては「逸失利益はゼロです」と主張してくることもあります。 適正な逸失利益を計算し、法的根拠をもって保険会社に主張するためには、弁護士に依頼することが確実な選択肢です。
7. 弁護士費用特約を活用しよう
「弁護士に依頼したいけれど、費用が高額になりそうで怖い」と心配される方も多いでしょう。 そこで必ず確認していただきたいのが、ご自身やご家族が加入している自動車保険の「弁護士費用特約」です。
この特約が付帯していれば、弁護士費用(相談料や着手金、報酬金など)を原則300万円まで保険会社が負担してくれます。大半の交通事故において弁護士費用が300万円を超えることはないため、実質的な自己負担ゼロで弁護士にすべての手続きを依頼することが可能です。 (※特約を利用しても、翌年の保険料が上がったり、等級が下がったりすることはありません)
8. まとめ:症状固定のタイミングこそが弁護士相談のベストタイミング
主治医から「症状固定」と言われたら、それは「これまでの治療期間」が終わり、「後遺障害の申請」と「示談交渉」という次のステージに進む準備に入ったことを意味します。
被害者の方がご自身で、専門知識を持つ保険会社と対等に交渉し、適正な賠償金の支払いを受けることは、残念ながら現状の保険会社の運用では極めて困難です。
- 本当に今が症状固定の適切な時期なのか?
- 後遺障害診断書に不備はないか?
- 被害者請求の手続きはどうすればいいのか?
これらの悩みを解決する糸口となるのが、交通事故に強い弁護士への相談です。 特に、「症状固定と言われた直後(あるいは後遺障害診断書を作成する前)」は、弁護士が介入する最も重要なタイミングです。
当事務所では、広島の交通事故被害者が、適正な後遺障害等級の認定を受け、弁護士基準による最大限の賠償金の支払いを受け取ることができるように、全力でサポートしています。
「症状固定と言われたけれど、これからどうすればいいか不安」という方は、安易に手続を進めてしまう前に、ぜひお早めに当事務所の無料相談をご活用ください。
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