交通事故により重い障害が残ってしまい、どうしたらいいかわからない方へ。今後の生活を守るための正しい対処法と手続きを弁護士が解説

交通事故の被害に遭い、懸命に治療やリハビリを続けてきたにもかかわらず、手足の麻痺、関節の可動域制限、視力や聴力の低下、あるいは高次脳機能障害や脊髄損傷など、極めて重い障害が残ってしまった場合、被害者ご本人やご家族の絶望感と不安は計り知れません。 「これからの仕事や生活はどうなるのか」「介護費用は誰が払うのか」「一生この不自由な身体と付き合っていかなければならないのか」と、どうしていいかわからず途方に暮れてしまうのは当然のことです。

私たちのもとへも、広島にお住まいの方々から、交通事故によって生じた重い後遺症に関する切実なご相談が日々寄せられています。重い障害が残ってしまったという厳しい現実を前にして、まず皆様に知っていただきたいのは、「今後の生活を守るためには、適正な補償(賠償金)を確実に受け取るための正しい手続きが必要である」ということです。そのためには、手続を保険会社に任せているだけでは不十分で、被害者側で主体的に行動する必要があります。

本記事では、重い障害が残ってしまいお悩みの方に向けて、適正な賠償を受けるために知っておくべき「後遺障害」に関する基礎知識、部位ごとに必要な医学的検査、認定手続きの流れ、そして交通事故問題において弁護士に相談するメリットについて、詳しく解説いたします。

1.「後遺症」と「後遺障害」の決定的な違いと、「症状固定」というターニングポイント

交通事故の賠償実務において、まず理解しておかなければならないのが「後遺症」と「後遺障害」の違いです。この二つの言葉は日常会話では同じように使われますが、賠償実務上は全く異なる意味を持ちます。

後遺症とは

交通事故によるケガに対して治療を続けたものの、ある程度の改善にとどまり、完全には治りきらずに将来にわたって残ってしまった機能障害や神経症状などの「症状そのもの」を指す医学的な用語です。

後遺障害とは

残存した「後遺症」のうち、その存在が医学的・客観的に証明されており、かつ労働能力の喪失を伴うもので、自動車損害賠償保障法(自賠法)の定める「後遺障害等級(第1級~第14級)」に該当(相当)すると判断されるものを指します。

示談交渉において最も注意すべきなのは、保険会社に対して「重い後遺症が残ったから賠償してほしい」と口頭で主張するだけでは、適切な賠償金は支払われないという事実です。法的な補償の対象となるためには、所定の手続きを経て「後遺障害」としての等級認定を受けることが極めて重要になります。

また、治療を続けてもこれ以上の大幅な改善が見込めなくなった状態(=後遺症が残った状態)に達することを、医学用語で「症状固定(しょうじょうこてい)」と呼びます。 重いケガの場合、治療期間が長引くにつれて、加害者側の保険会社から「事故から半年経ったので治療費の支払いを打ち切ります」「そろそろ症状固定にしてください」と打診されることが少なくありません。しかし、症状固定の時期を判断するのは保険会社ではなく、あくまで患者を診ている「主治医」です。治療の必要性があるにもかかわらず、保険会社の言葉に安易に従って通院をやめてしまうと、後遺障害等級認定に必要な適切な通院期間を欠く状態に陥ってしまうことがあります。必ず医師と相談しながら治療を継続することが重要です。

2.後遺障害等級に認定されることで得られる「2つの大きな賠償」

残存した症状が後遺障害等級(1級~14級。数字が小さいほど重い障害となります)に認定されると、通常のケガの治療費や休業損害、入通院慰謝料とは別に、以下の「2つの大きな損害賠償」を請求できるようになります。重い障害が残った場合、これらの合計額が数千万円から1億円以上に達することもあります。重症のケースでは、今後の生活を支える重要な経済的な基盤になるのです。

① 後遺障害慰謝料

交通事故によって障害が残り、将来にわたって不便や精神的苦痛を強いられることに対する慰謝料です。認定された等級に応じて金額の目安が定められています。 なお、慰謝料の算定には、「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判所基準(弁護士基準)」の3つの基準が存在します。 ・自賠責基準:被害者への最低限の保障を目的とした国の基準であり、金額は最も低く設定されています。 ・任意保険基準:各保険会社が独自に定めている基準で、自賠責基準と同等か少し高い程度です。 ・裁判所基準:過去の裁判例に基づいて設定された適正な基準であり、最も高額です。 保険会社は当初、低い自賠責基準や任意保険基準で賠償金を提示してきますが、後述するように弁護士が介入することで、最も高額な裁判所基準での請求が可能になります。

② 後遺障害による逸失利益(いっしつりえき)

後遺障害が残ったことによって労働能力が低下し、将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入の減少分に対する補償です。 逸失利益は、「基礎収入(事故前の年収等) × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式で求められます。 労働能力喪失率は、第1級の100%から第14級の5%まで、等級に応じて細かく定められています。重い障害が残って今まで通りの仕事ができなくなった場合や、寝たきりになってしまった場合などには、この逸失利益が極めて重要な補償となります。

3.重篤な後遺症を客観的に証明するための重要な「医学的検査」

後遺障害等級を獲得するためには、単に「手足が動かない」「痛みやしびれがひどい」「目が見えにくい」と自覚症状を訴えるだけでは足りません。画像や数値によってできる限り客観的に症状を証明する必要があります。医師から「後遺症が残りそうだ」と診断された場合、障害の部位に応じて以下のような専門的な検査を漏れなく受けることが必要になります。

・目(眼)に障害が残る場合

頭部外傷などによって視力低下や視野狭窄、複視(物が二重に見える)などの障害が残る場合があります。 視力障害については、万国式試視力表を用いた「視力検査」で矯正視力を測ります。ピントが合わなくなる調節機能障害には、アコモドポリレコーダーを用いた「調節力検査」を行います。複視にはヘスコオルジメーターを用いた「ヘススクリーンテスト」、視野が狭くなる視野障害にはゴールドマン視野計を用いた「視野検査」、視神経の疾患の有無を調べるには「フリッカー検査」を実施します。

・耳(聴力)に障害が残る場合

オージオメーターを用いて気導聴力と骨導聴力を調べる「純音聴力検査」や、言葉の聞き取りやすさを調べる「語音聴力検査」が基本です。しかし、これらは被害者の応答に基づく自覚的な検査であるため、等級認定において客観性が疑われる場合があります。そのため、音に対する脳の電気生理学的な反応を見る「聴性脳幹反応(ABR)」や、大音響に対する耳小骨の筋肉の収縮作用を利用する「アブミ骨筋反射(SR)」などの他覚的聴力検査を受けることが重要です。

・腕や手、足に障害が残る場合

骨折や神経損傷により、手足が動かしづらくなったり麻痺が残ったりすることがあります。 関節の動く範囲を測定する「上肢・下肢可動域検査」では、ケガをしていない健側と、ケガをした患側を両方測定し、その差を比較します。また、骨の癒合不全や神経圧迫の有無を確認するため、レントゲン、CT、MRIなどの「画像検査」も不可欠です。膝の十字靭帯などを損傷し関節の安定性が失われた場合には、脛骨を前後方向に引き出して緩みを確認する「前方・後方引き出しテスト」などを実施し、カルテに記録を残してもらう必要があります。

・嗅覚に障害が残る場合

T&Tオルファクトメータを用いた「基準嗅力検査」や、アリナミン静脈注射を用いてにおいを感じる時間を測る「静脈性嗅覚検査」によって、嗅覚の脱失や減退を客観的に証明します。

・むちうち(頚椎捻挫・腰椎捻挫)等の症状が残る場合

一見すると外傷がなくても、激しい痛みやしびれが慢性化することがあります。この場合、MRI撮影を行い、椎間板の異常や神経根への圧迫が画像上認められるかを確認することが、等級認定の大きなカギとなります。

これらの検査が不足していると、実際には症状があって日常生活に大きな支障をきたしているにもかかわらず、「医学的根拠がない」として非該当や不当に低い等級にされてしまう恐れがあります。

4.適正な後遺障害等級認定を受けるための手続きの流れ

適切な検査を受けた後、実際に後遺障害等級の認定を獲得するためには、以下の流れで手続きを進めます。

① 症状固定と「後遺障害診断書」の作成依頼

治療を尽くしても症状が改善しなくなった(症状固定)段階で、主治医に「後遺障害診断書」という専用の診断書を作成してもらいます。この書類は、等級認定における最重要書類です。自覚症状だけでなく、各種検査結果などの他覚的所見等が正確かつ詳細に記載されている必要があります。医師はケガを治す専門家ですが、後遺障害認定のルールに精通しているとは限りません。そのため、記載内容に漏れや不備がないか、被害者側でしっかりとチェックすることが求められます。

② 後遺障害等級認定の申請(事前認定と被害者請求)

申請方法には大きく分けて2つのルートがあります。 一つは「事前認定(じぜんにんてい)」です。これは、加害者の加入する任意保険会社に対して後遺障害診断書を渡し、あとの手続きを一任する方法です。手間はかかりませんが、保険会社がどのような資料を提出したのか被害者には見えにくく、また保険会社は被害者に有利な追加資料をわざわざ集めて提出してくれることはないため、適切な認定には不十分な場合があります。

もう一つは「被害者請求(ひがいしゃせいきゅう)」です。これは被害者自身(または依頼した弁護士)が必要書類や証拠となる医療記録(カルテ、画像データ等)をすべて集め、直接自賠責保険へ請求する方法です。手間や費用はかかりますが、提出する資料を自ら選別し、医師の意見書や日常の介護状況を記した陳述書など、有利な証拠を漏れなく提出できるため、適正な等級を獲得できる可能性が高まります。重い障害が残っている場合は、この「被害者請求」ルートがお勧めです。当事務所でも、基本的に全件についてこの「被害者請求」ルートを採用しています。

③ 審査・認定結果の通知

提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構という専門機関によって原則として書面審査が行われ、該当する等級が通知されます。

④ 結果に納得いかない場合の「異議申立て」

万が一、申請した結果が「非該当」であったり、想定よりも明らかに低い等級であったりした場合、その結果に対して「異議申立て」を行うことができます。異議申立てには回数制限はありませんが、単に「痛いから等級を上げてほしい」と不満を述べるだけでは結果は覆りません。なぜ前回の認定が不当なのかを説得的に指摘し、それを裏付けるための新たな医学的証拠(別の検査結果や専門医の意見書など)を追加提出して臨む必要があります。

5.重傷事案において弁護士に相談・依頼する5つの大きなメリット

重い障害を抱え、日常生活や介護だけでも限界に近い状況の中で、これらすべての複雑な手続きを被害者ご本人やご家族だけで進めるのは至難の業です。とくに重大な交通事故において、専門的知見を持つ弁護士に相談・依頼することには、以下のような計り知れないメリットがあります。

① 賠償金が大幅に増額する可能性が高い(裁判所基準の適用)

弁護士に依頼する最大のメリットは、慰謝料や逸失利益の計算において最も高い基準である「裁判所基準(弁護士基準)」を用いた交渉が可能になることです。前述したむちうち程度のケガでも、弁護士が入ることで賠償金が2〜3倍(数十万〜数百万円の増額)になることは珍しくありません。これが、四肢麻痺や高次脳機能障害といった第1級や第2級の重篤なケースであれば、保険会社の提示額と弁護士の獲得額とで、数千万円から1億円近くもの差が生じることも実際に起こり得ます。

② 後遺障害診断書の作成や適切な検査のサポートを受けられる

医学的・法律的知識を併せ持つ交通事故専門の弁護士であれば、症状固定のタイミングで「どの部位について、どのような検査を受けるべきか」、そして「医師に後遺障害診断書へどのように記載してもらうべきか」について、具体的なアドバイスを提供できます。必要に応じて、弁護士が病院に同行して医師と面談を行い、法的な観点から記載のポイントを伝えることも可能です。

③ 煩雑な「被害者請求」の手続きをすべて一任できる

医療記録の取り寄せや数多くの書類作成など、非常に手間と専門知識を要する「被害者請求」の手続きを、弁護士が全面的に代行します。これにより、ご本人やご家族の肉体的・時間的な負担が大幅に省かれ、手続きの漏れやミスを防ぐことができます。

④ 保険会社とのやり取りによる精神的負担から解放される

事故後、ただでさえ心身が辛い状況の中、保険会社の担当者からたびたび電話がかかってきたり、治療費の打ち切りを迫られたりすることは、大きなストレスになります。弁護士に依頼した瞬間から、保険会社との連絡窓口はすべて弁護士に一本化されます。煩わしい交渉事から解放され、ご家族は介護やリハビリ、今後の生活の再建に専念することができます。

⑤ 異議申立ての成功率が高まる

もし最初の等級認定結果が不当なものであっても、経験豊富な弁護士であれば、カルテや画像データを詳細に分析し、結果を覆すために足りない要素を洗い出します。新たな医療照会や医師への意見書作成依頼などを通じて、効果的で説得力のある異議申立てを行い、適正な等級を獲得する確率を高めることができます。

6.おわりに

交通事故によって重い障害が残ってしまったとき、「どうしていいかわからない」と目の前が真っ暗になってしまうのは当然の反応です。しかし、将来にわたるご自身やご家族の生活を守るためには、適正な「後遺障害等級」の認定を受け、妥協することなく正当な賠償金を確保することが非常に重要です。

広島で交通事故に遭われ、重い後遺症・後遺障害でお悩みの方は、決して一人やご家族だけで抱え込まず、早い段階で交通事故の対応を得意とする弁護士にご相談ください。当事務所は、手続きを保険会社任せにするのではなく、法と医学の両面から被害者の方とそのご家族を徹底的にサポートします。お一人で悩まず、まずは一度無料相談をご利用ください。

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