80代後半の高齢女性の家事労働(主婦休損)が認定された事例

80代後半の高齢女性の家事労働(主婦休損)が認定された事例

事件概要

  • 被害者:80代女性
  • 事故の分類:歩行中に自動車と接触
  • 傷病名:上腕骨頚部骨折
  • 後遺障害等級等:7級

依頼のきっかけ

事故から約1ヶ月後の段階で、依頼者本人は重傷を負っているにもかかわらず、相手方と保険会社の対応が不誠実であるように感じ、弁護士への依頼を決断しました。 

解決までの経緯

事故直後ということもあり、まずは弁護士が交渉の窓口になることで、治療に専念していただくための環境作りを行いました。

依頼者の親族としては、事故後の流れが良く分からず、これまで些細なことでも「不利にならないか」「どういう意味だろう」等と色々と調べて、結局、よくわからないときもあり、モヤモヤしていたそうですが、依頼したことでこのような不安は解消されました。

依頼者は80歳代後半とご高齢でした。治療中に他の症状も発症し、結果的に治療期間が長期化してしまいました。

この間の治療費や施設利用料については、交渉によって加害者側の任意保険会社が支払対応をすることになりました。

事故日から約1年2ヶ月で症状固定となりました。

症状固定後に後遺障害等級認定の申請(被害者請求)をしたところ、結果は「1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」として別表第二第7級9号の後遺障害が認定されました。

加害者側の任意保険会社へ賠償金額の請求書を送付したところ、加害者側は「依頼者が夫と同居しているとはいえ相当に高齢であるため家事労働の実態はなく損害の算定にあたって考慮できない」との主張でした。要するに休業損害も逸失利益も専業主婦(家事労働者)であることを前提に認めることはできないという厳しい主張でした。

依頼者としては、確かに高齢であるものの、実際に夫のために家事をしていた事実はあるのだから、到底受け入れられる内容ではありませんでした。

そんとあめ、交渉は決裂し速やかに訴訟提起となりました。

裁判所でもこの点は中心的な争点になりました。

家事労働の実態を当方が陳述書で具体的に主張立証したところ、依頼者は高齢とはいえ夫の介護もしていたこと等の事実が認定され、裁判所から、家事労働ができなくなったことによる損害を認定する内容の和解案が提示されたため、最終的には和解によって解決となりました。

弁護士の目 

依頼者が高齢で特に80代後半の方ですと、保険会社は年齢だけを根拠に「他人のために家事労働をすることはできない」と主張をして、休業損害等の発生を否定することがあります。

広島県でも高齢化率は増加しており、統計では、85歳以上の高齢者人口は15万7223人(約5.8%)とされています(引用元:広島県における高齢化率及び後期高齢化率について | 広島県)。

では、このような高齢者の方々は、交通事故被害に遭って家事ができなくなった場合、休業損害等が認められないのでしょうか。

法的には、高齢主婦(主夫)に休業損害が認められるか否かは被害者の年齢により画一的に判断されるものではなく、個別具体的な事情を勘案して、家事労働の実態に即して判断されるべきと考えられます。

もちろん、育児や介護がある場合に比べると、家事労働の質や量に変化があることはあります。そのため、賃金センサス「全年齢平均賃金」を採用することが相当ではないと認定される事案はあります。

実際に裁判例の傾向も、ある程度の年齢(65歳くらい)を超えると、全年齢平均ではなく、より低い方の「年齢別平均賃金」(70歳であれば70歳の平均賃金)を採用することがあります。

しかし、同居の家族のために家事労働を現実にしているのであれば、年齢を理由に「一律ゼロ」と言われる筋合いはありません。

本件では、事故前の生活状況等について詳細な立証をすることで、依頼者が80代後半と一般的には休業損害が否定されやすい傾向にある年齢であったにもかかわらず、休業損害の発生が認定されることになりました。

 

弁護士法人ラグーン 広島支店(広島弁護士会所属)
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