
治療(一括対応)の打ち切りを回避し、医師の協力を得て後遺障害14級の認定がされた事案
- 後遺障害
- 14級
弁護士法人ラグーン 広島支店(広島弁護士会所属)
ご相談の時点で、過失割合で保険会社ともめていました。
今後の交渉を少しでも有利に進めたいと考え、ラグーンへ来所されました。
また、事故後、左膝の痛みにより、正座をすることができなくなりました。
後遺障害が残る可能性があり、「適切な後遺障害等級の認定を受けたい」という思いから、インターネットで検索し、ラグーンへ依頼することになりました。
依頼者、「正座ができるようになるまで治療を継続したい」という想いを強く持たれていました。
一方で治療期間が長引くことで揉めるのではないかと躊躇する気持ちもありました。
ラグーンでは、依頼者の思いは優先し、まずは治療の継続をお勧めしました。
問題は、保険会社が依頼者の納得のいく時期まで治療継続を認めてくれるかという点でした。
依頼者がラグーンへ来所されたのは事故から半年程度経過した段階でした。
他覚的所見が乏しく自覚症状が主体の事案では、事故後半年はもちろん、早ければ1カ月程度で、保険会社から「治療費打ち切り」の話がなされます。
本件でも、受任後早い段階で、保険会社から症状固定に関する問い合わせがありました。
しかし、正座という日常動作ができるようになるまで通院したいという依頼者の想いは尊重されるべきです。
また、可動域は少しずつ良くなっており、医学的にも改善効果が認められていました。
ラグーンでは、保険会社に対して、治療の必要性・相当性は認められると強く主張し、依頼者の治療継続をサポート致しました。
結果的に、依頼者は、正座ができるようになるまで症状が改善しました。そして、その時期をもって、症状固定となりました。
ラグーンでは、症状固定のタイミングで、主治医と面談をしました。
主治医に対し、依頼者の自覚症状を正確に後遺障害診断書に記載していただくことを依頼しました。
あわせて他覚的な所見や神経学的検査の所見についても漏れなく記載をお願いしました。
また、今回のケースでは、依頼者の左膝の裏(膝窩部)に手術痕が残っていました。
そのため、手術痕についても後遺障害診断書に記載していただくように、主治医に依頼をしました。
実は、依頼者の手術痕については、長さ、幅ともにそれほど大きなものではありませんでした。
そのため、自賠責保険で認定される「醜状痕」には該当しないとの判断がなされることが予想されました。
しかし、ラグーンでは、醜状痕の存在が左膝の痛みを推測させる所見の一つとも考えることができましたし、依頼者の症状を適切に伝え、事後の賠償においても考慮されてしかるべきとの方針から、あえて戦略的に醜状痕についても後遺障害診断書に記載する方向性で進めることにしました。
自賠責保険への申請(被害者請求)の結果、残念ながら醜状痕については後遺障害に該当しないとの判断になりました。
一方で、左膝の痛みについては14級9号の認定がなされました。
その後、保険会社との交渉を開始しました。
しかし、保険会社の主張は総額で約250万円の支払いを内容とするものでした。
当方が算定していた金額と比べると著しく少なく、全く適正な賠償額の提示ではありませんでした。
そこで、依頼者と打ち合わせのうえ、早々に交渉を打ち切り、訴訟提起をする方針に決めました。
訴訟提起をしたところ、加害者側は、様々な反論をしてきました。
争点は、以下のとおり多岐にわたりました。
①正座ができるようになるまで治療を継続したことについて、治療の必要性・相当性は認められるのか
②事故後に収入が増えている場合に、逸失利益は認められるのか
③①と関連して、入通院慰謝料はいくらと算定すべきか
④自賠責の後遺障害に該当しない醜状痕について、後遺障害慰謝料算定にあたって考慮すべきか
⑤依頼者の過失は何割か
診療録、刑事記録等の資料を1つ1つ精査し、当方の主張を出し尽くしたところで、裁判所から和解案が示されました。
和解案の内容は①、②、③については当方の主張がすべて認められましたが、残念ながら、④については認められませんでした。
そして、⑤については双方にとって中間的な過失割合という内容でした。
依頼者としては、特に強くこだわっていた部分を認定してもらえたので、納得ができる内容でした。
相手方も応じたため、結論として和解で解決に至りました。
和解内容の概略は以下のとおりです。
【和解結果】(細かい損害項目は省略)
| 治療費 | 100万 |
| 傷害慰謝料 | 170万 |
| 後遺障害慰謝料 | 110万 |
| 逸失利益 | 140万 |
| 総額 | 約520万 |
当初の保険会社の提示額と比べると約270万円の増額となりました。
交通事故被害者にとって、症状固定時期をどのように考えるのかは非常に難しい問題です。
戦略的に、早めに症状固定と判断し、被害者請求をすることも考えられなくはありません。
しかし、多くの被害者は、「治療により症状が完治・改善すること」を望んでいます。
症状固定後は、原則として、自腹で通院をしなければなりません。
また、慰謝料は症状固定までの通院期間をもとに算定されます。
無理に早く治療を終えると、慰謝料の算定期間は短くにあります。
症状固定後に痛みがあって自腹で通院をしても慰謝料の算定では基本的に考慮されません。
安易に症状固定時期を早めることには問題があり、症状固定時期は専門的な判断に基づき慎重に検討する必要性があります。
本件でも、何より「正座ができるようになりたい」という被害者の想いを最優先しました。
また、治療による改善効果も認められていましたので、治療の継続という選択肢をとりました。
治療期間がのびたことにより、訴訟では治療の必要性・相当性が争点になってしまいましたが(そのため、もしかしたら依頼者に余計な心配をさせてしまったかもしれませんが)、結論的には、当初の見立てどおり、当方の主張が認められましたので、不利益はありませんでした。
また、自賠責保険の認定上の後遺障害には該当しない後遺症状(今回は醜状痕)が残った場合、この点を損害算定にあたってどのように考慮するのかは非常に難しい問題です。
被害者代理人としても、傷害慰謝料の増額事由として、あるいは後遺障害慰謝料(の増額事由)として考慮してもらいたいところです。
裁判例では、自賠責保険の後遺障害に該当しない醜状痕について、「軽視できない苦痛を与える」として100万円の慰謝料を認めたもの(京都地裁平成23年12月16日判決)、「周囲の視線が気になるなど対人関係等に消極的になる可能性は否定できない」として慰謝料増額事由として考慮したもの(横浜地裁平成26年1月31日判決)等があり、全く認められないというわけではありません。
本件でも、この争点について強く主張しましたが、結論論として消極的な判断となりました。非常に悔しい思いでした。
しかし、「被害者の実情をよく理解してもらったうえで裁判所にきちんと判断してもらう」ということは被害者が納得して前を向くために極めて重要なプロセスです。
損害の主張・立証責任は被害者側にありますので、少なくとも最初からあきらめるのではなく、積極的に主張をして少しでも被害回復を図りたいところです。
弁護士法人ラグーン 広島支店(広島弁護士会所属)
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