
一人暮らしの無職女性に逸失利益と休業損害が認められた事案
- 自転車
- 後遺障害
- 11級
- 12級
弁護士法人ラグーン 広島支店(広島弁護士会所属)
依頼者は、事故から5年以上が経過した段階で、後遺障害等級12級13号との判断を受けていました。
保険会社から示談案が提示されましたが、後遺障害逸失利益の算定や休業損害の算定についてどうしても納得ができませんでした。
また、将来、骨折した部分について、再手術が必要になった場合の費用について賠償はされるのか、不安に思ったことから、弁護士への依頼を決断されました。
事故場所は、居住地から遠方でしたが、今後の打ち合わせのことも考えて地元の弁護士を選ばれたようです。
依頼者は、仕事の関係上、乗船をすることが多くありました。ところが、事故の影響で、思うように歩行することができなくなりました。
また、咄嗟に足を踏ん張る動きは困難になったこともあって、船上での作業は極めて困難な状態になりました。
勤務先の会社は、そのような状態で依頼者に乗船作業をさせることは危険と判断し、依頼者は会社から乗船の仕事をさせてもらえなくなりました。
その結果、乗船をすることで支給されていた乗船手当を受け取ることができなくなりました。
実は、依頼者の給料のうち、乗船手当が占める割合は高く、乗船手当を失ったことにより、約3分の1も減給することになってしまったのです。
さらには、事故前に比べて十分な勤務ができなくなったことから、会社の内規によって、昇進のスピードも落ちてしまい、精神的にも経済的にも著しい損害を負うことになってしまいました。
一般的には、後遺障害等級12級の認定を受けた場合、自賠責保険では労働能力の喪失率は14%とされています。
これをもとに、賠償実務では、事故時の収入の14%程度を、事故により将来受け取ることができなくなった(逸失した)利益と考え、労働能力喪失期間分の補償を求めるのが通常です。
しかし、今回の事案では、依頼者は乗船手当を失ったことで、約3分の1の減給になっているわけですから、今後、依頼者に生じることが予想される損害(逸失した利益)は、明らかに14%を超えるものでした。そのため、ラグーンでは14%を超える損害について、重点的に主張・立証をしていくことになりました。
ラグーンでは、まずは勤務先の給与算定や昇進に関する内規を確認し精査しました。そのうえで、内規を相手方の保険会社へ示し、依頼者に発生している不利益、将来発生しうる不利益を詳細に説明し、依頼者には将来自賠責保険の喪失率を超える損害が発生する可能性が極めて高いことを主張しました。
その結果、比較的早期に、当方の主張どおりの損害(14%の喪失率を大きく超える約30%)を認定してもらうことができました。
また依頼者のもう一つの心配事項であった将来の再手術費用についても、示談書の一部に、再手術費用は別途協議するという趣旨の文言を加えることで、解決ができました。
逸失利益の算定において、労働能力喪失率をどの程度に認定するのかは、実務上、自賠責保険で定められた等級に対応する労働能力喪失率(自賠法施行令別表記載)を参考にします。例えば、14級であれば5%、12級であれば14%、1級であれば100%とされています。
しかし、すべての被害者について自賠責保険の労働能力喪失率を紋切り型に適用させてしまうと、事案によっては明らかに不合理な結論を招いてしまいます。職業、年齢、性別、後遺障害の部位・程度によって、後遺障害が労働能力に与える影響は様々だからです。例えば、プロのピアニストとして多くの収入があった方が手のしびれのためピアニストとしての将来の活躍を断念せざるをえなくなり、収入がゼロになったというケースで、「後遺障害等級が12級だから収入の14%しか補償しません」という結論が極めて不合理であることは誰の目からみても明らかです。
本件もまさに、自賠責保険の等級に対応する労働能力喪失率を形式的に適用させてしまうと、乗船手当を失ったという被害者の重大な損害が無視されるという不合理な結論を招いてしまう事案でした。広島は海に面しており乗船の業務に従事されている方も多くいらっしゃるため、本件と同じように乗船手当という特殊な収入の扱いについて問題となることは珍しくありません。
裁判所もこの問題については、形式的に自賠責保険で定められた等級に対応する労働能力喪失率を用いるだけではなく、後遺障害によって被害者が受ける労働・日常生活上の具体的な不利益の内容・程度を審理し、実質面を重視して判断をしています。
裁判外の交渉の段階で実質的な後遺障害逸失利益が算定されるケースは多くありませんが、精緻な主張・立証が奏功した事案でした。
また、本件は自転車に乗車中の事故で、大腿骨(太もも)を骨折した事案でした。自転車に乗車中以外でも、歩行中、バイク事故でも見られる受傷形態です。
大腿骨頚部(太ももの付け根)を骨折した場合、神経症状や可動域制限といった後遺障害が残ることがありますが、その他に、将来、人工骨頭に置き換える手術が必要になることがあります。そのため、将来手術が必要になった場合に備えて、示談のときに「将来手術が必要になったら、あらためて賠償について話し合いをしましょう」という文言を入れておくことが重要になります。
広島県、特に広島市内は、地形が平坦であること等から、自転車の交通量が比較的多い地域です。自転車側が被害者もしくは加害者になって大けがをするというケースも少なくありません(広島県警察が公表している令和7年の自転車事故の統計が参考になります。bcjiko2025.pdf)。
そのため、実は後遺障害の認定や将来の治療費が問題となることも多く、思わぬところで損をしないように、まずは交通事故に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士法人ラグーン 広島支店(広島弁護士会所属)
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