
一人暮らしの無職女性に逸失利益と休業損害が認められた事案
- 自転車
- 後遺障害
- 11級
- 12級
弁護士法人ラグーン 広島支店(広島弁護士会所属)
事故直後の加害者側の不誠実な対応に不安と憤りを感じたことから、ご相談に来られました。
というのも、本件では、被害者が自転車で青信号に従って進行していたのに対し、加害者は「被害者側の信号が赤だった」と主張して、責任を逃れようとしている状況だったのです。
また、加害者が自身の任意保険会社に事故について保険を利用する意思を伝えていなかったため、治療費の支払いについてもスムーズな対応がなされていない状況でした。
事故直後で今後の治療や生活についても不安を抱えている状況だったため、まずは加害者側との対応をラグーンが引き受け、治療に専念できる環境を整えることからスタートしました。
依頼を受けた後、ラグーンから加害者に対して通知書を送付しました。
今後の事故に関する対応はすべて弁護士が行うことを伝えるとともに、客観的な事故状況を確認した上で、加害者に法的責任が認められることを主張しました。
通知書が届いた後、加害者は一転して任意保険を利用するための手続きを行いました。これまで問題となっていた治療費の支払いについても対応が開始されました。
その後の捜査等によって、加害者が主張していた「被害者側の信号が赤だった」という主張が、客観的な事故状況とは矛盾するものであることが明らかになりました。
加害者の法的責任は明白になりましたが、次に、依頼者の損害が争点となりました。
本件では、交通事故による後遺障害だけでなく、休業損害の算定における収入の立証も大きな問題となりました。
被害者は自営業を営んでいましたが、確定申告上の所得だけでは実際の収入状況を十分に反映していない部分(申告漏れの所得)がありました。
そのため、保険会社は収入について争い、十分な、つまり申告されていなかった部分を含めた休業損害を支払っていませんでした。
しかし、休業損害が支払われなければ、被害者本人だけでなく、その収入によって生活していたご家族の生活にも影響します。
そこで、ラグーンでは、被害者の取引先にも協力を依頼し、実際の取引状況や収入を裏付ける資料を収集しました。
さらに、被害者が保管していた帳簿等の資料についても検討のうえ整理し、事故によって実際に発生した収入減少を具体的に立証しました。
その結果、保険会社から、生活を維持するために必要な休業損害について、定期的な支払いを受けられるようになり、被害者は治療に専念できる環境を整えることができました。
治療を継続した結果、左肩の可動域制限などの症状が残りました。
そこで、治療経過や症状、各種検査結果等を確認した上で、当事務所から被害者請求による後遺障害等級認定申請を行いました。
その結果、肩関節の機能障害について10級10号、顔面部の醜状痕について9級16号、併合8級の後遺障害等級を獲得することができました。
後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料だけでなく、将来得られたはずの収入を失うことによる後遺障害逸失利益も問題となります。
そのため、適切な後遺障害等級の認定を受けることは、最終的な賠償額を大きく左右する重要なポイントとなります。
示談交渉では、慰謝料の増額事由が認められるかが大きな争点となりました。
本件では、事故直後から加害者が被害者側の信号が赤だったと主張して責任を争っていたことや、任意保険の利用手続を行わず、治療費の支払いにも支障が生じていたことなど、加害者側の事故後の対応に重大な問題がありました。
そこで、これらの事情が被害者に与えた精神的苦痛の大きさを強く主張し、通常の慰謝料額を上回る金額を請求しました。
保険会社は当初、慰謝料の増額について難色を示していましたが、事故後の具体的な経緯を丁寧に説明し、粘り強く交渉した結果、慰謝料の増額を認めてもらうことができました。
もう一つの重要な争点が、後遺障害逸失利益の算定に用いる基礎収入でした。
自営業者の場合、会社員とは異なり、確定申告書の所得金額だけでは実際の収入状況を正確に把握できないケースがあります。
特に、確定申告に反映されていない収入については、客観的な資料によってその存在や金額を立証する必要があり、容易に認められるものではありません。
そこで、本件では、取引先から取得した収入を裏付ける資料、被害者が保管していた帳簿等の資料、実際の取引状況を示す資料、自営業者としての収入状況を裏付けるその他の資料などを整理して提出しました。
また、確定申告上の所得額を上回る基礎収入が認定された裁判例等も示し、本件においても実際の収入状況を踏まえた基礎収入を認定すべきであることを具体的に主張しました。
その結果、保険会社との裁判外の交渉において、概ね当方が主張した基礎収入を前提として損害額を算定することが認められました。
事故によって気が動転し将来の不安を抱えている状況であるにもかかわらず、加害者側が著しく不誠実な対応をとるというケースは残念ながら一定程度存在します。
このような不誠実な対応について、慰謝料を通常の金額(裁判基準)よりも増額して支払うべきという考えがあり、一般論としては裁判例でも認められているところです。
しかし、具体的な事例で、慰謝料の増額が認定されるケースはあまり多くありません。
それは、「加害者の著しく不誠実な対応」には一定の幅があり、客観的にみて「慰謝料の増額を認めるほど悪質な内容である」ことを立証することが難しいからです。
裁判例でも慰謝料増額が認定されているケースは、「飲酒運転をしていた」「無免許運転で逃走した」というような客観的に状況や経緯を立証しやすい(もしくは加害者側が争わなかった)ケースです。
慰謝料増額の主張・立証は難しい(=裁判でもなかなか認められない)という現状があるため、示談交渉の段階で保険会社が慰謝料の増額を認めるケースはほとんどないのではないかとか思います。
ラグーンでは、被害者の方の言い分をよく聞き、裁判例等に照らして、慰謝料の増額事由が認められるか否かを慎重に検討しています。
認められる可能性がある事案では積極的に加害者側に慰謝料の増額を主張するようにしています。
本件が裁判になったときに裁判所が慰謝料の増額を認めてくれるか否かは分かりませんでしたが、まずは「しっかりと主張する」スタンスが奏功した事案でした。
また、自営業者の基礎収入については、会社員と比べて、争いになりやすい傾向があります。
特に確定申告をしていない収入については、「公的に申告をしていないのだから自業自得では?」という側面もあり、裁判でも認定されるケースはかなり限定されます。
本件では、裁判前の段階から、裁判で細かい立証作業をしているときのように、取引先の協力(日当支払いの証明書)や手持ち資料(帳簿等)を整理して、丁寧な立証を心がけました。
リスク、つまり裁判をした場合に、基礎収入額が当方の言い分通り認定されない可能性もあることを踏まえて、裁判外での早期解決のほうが望ましいと判断をしたからです。
結果的に、裁判外で、申告所得額以上の基礎収入を認定してもらうことができました。
事故直後から弁護士へ依頼していただいたことで、治療費の不払い、休業損害の未対応、適正でない賠償額の受領といった様々なリスクを防止できた大変やりがいを感じる事案でした。
弁護士法人ラグーン 広島支店(広島弁護士会所属)
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