
加害者が任意保険未加入の高齢者の死亡事故について、被害者加入の任意保険から裁判基準による支払いを受けた事案
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弁護士法人ラグーン 広島支店(広島弁護士会所属)
依頼者が交通事故に遭ったのは、早朝、いつもどおり日課にしていた犬の散歩をしていたときのことでした。
歩行していた依頼者に気づくことなく対面する車線から右折進行してきた車両に轢かれてしまったのです。
依頼者は、事故により、一命を取り留めたものの、脳に重大な損傷を負ってしまいました。
事故日以降、依頼者と奥様の人生は大きく変わることになったのです。
脳外傷による記憶障害、性格変化、注意障害…。ご家族のご苦労は想像を絶するものだったと思います。
ラグーンに来られたのは、症状もある程度落ち着き、後遺障害の等級認定も受け、保険会社から示談案を提示されたという段階でした。
保険会社の提示した示談金額が妥当であるのか心配になり、ご相談に来られました。
当初、他の弁護士にも相談をされていたようですが、専門性を感じなかったために、他の弁護士を探していたところ、交通事故に注力しているラグーンのホームページを見つけたそうです。
相談に来られ、複数の弁護士が対応することで、多角的に事案を検討できるという安心感から、ラグーンにご依頼いただくことになりました。
本件は、事故からすでに3年以上経過している事案でした。
そこで、まずはこれまでの治療や話し合いの経緯等を確認するために、記録を読み込むことから開始しました。
医療機関の記録や既払い金等、資料は膨大なものでしたが、これらをサマリーとしてまとめ、他の弁護士とも協議をし、本人との打ち合わせを重ね、加害者側へ請求する内容を検討しました。
また、依頼者やご家族との打ち合わせの中で、後遺障害の内容から考えて、保険会社の提示金額と想定される裁判基準の賠償金額には大きな隔たりがあったことから、今後、裁判になりうることをご説明し、ご家族に対しては、日常生活にどれほどの支障が生じているのか、付添い介護の必要性や内容が争点となりうるため、できる限り、日々の出来事を日記に残して欲しいとお願いをし、訴訟を視野に入れた対策を始めました。
医療記録等を検討のうえ適切な賠償金額を算定したところ、保険会社の示談案では将来介護費等の計上もされていなかったことから、その差は著しい状態でした。
将来介護費は、症状固定後に、介護が必要な状態である場合に、介護に要する費用を賠償するものです。ヘルパー等の職業的に介護をしている方の費用は当然のことながら、ご家族等が無償で介護にあたっている場合にも、介護の程度によって、日額数千円という単位で認められるものです。
今後の生活費に一部になるわけですから、将来介護費が発生する事案では、被害者のために、必ず請求をしなければならない損害項目です。
当方と保険会社の考えの開きが大きかったため、本人やご家族とも協議のうえ、示談交渉は早期に打ち切り、速やかに訴訟提起に移行することにしました。
訴訟提起をしたところ、加害者側は将来介護費の要否を中心に、様々な反論をしてきました。
そこで、ラグーンでは依頼者やご家族が日常生活を送るうえでどれほどの支障が生じているのか、裁判官にも具体的なイメージをもってもらうために、細かく立証をしていくことにしました。
交通事故では損害の内容について立証責任を負っているのは被害者側です。自賠責の等級認定があるだけで安心してはいけません。被害者やそのご家族と協力をして、実際に生じている支障の内容を具体的に説明し、立証していく必要があります。
具体的には、事前にご家族へ準備をお願いしていた日記、弁護士が被害者と半日行動をともにし、そのときの状況を撮影したビデオ・ご自宅の写真(例えば、火の消し忘れ、電気の点けっぱなし等を防止する目的で、壁に貼付された注意喚起の張り紙の内容等)、医師面談・病院同行時の聴き取りメモ等の証拠をもとに主張を組み立てていくことになりました。
主張・立証の結果、裁判所から和解案が提示されることになりました。
和解案は、将来介護費が発生することを前提としたものでした。
最終的には、双方ともに和解案を受け入れることになり、和解により解決をすることになりました。
【和解内容】
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損害 |
保険会社 |
和解内容 |
増額分 |
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傷害慰謝料 |
150万 |
200万 |
50万 |
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症状固定前の付添費 |
0 |
380万 |
380万 |
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後遺障害逸失利益 |
4500万 |
5000万 |
500万 |
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後遺障害慰謝料 |
1100万 |
2370万 |
1270万 |
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将来介護費 |
0 |
2600万 |
2600万 |
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近親者慰謝料 |
0 |
200万 |
200万 |
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その他 |
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約2500万 |
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合計 |
7500万 |
※その他の損害項目については割愛
交通事故によってこれまでの日常生活が180度変わってしまうというケースが存在します。ときには人生すら変えてしまうこともあります。今回のケースはまさにそのような事案でした。
今回のケースのように、交差点における歩行者を被害者とする事故類型は、広島県でも毎年多く発生しています。広島県の統計によれば、死亡事故の類型で最も多いのが、①道路形状は「交差点」(交差点付近を含む)②当事者の状況は「歩行者」とされています(令和8年6月末現在。広島県警察ホームページより。全国の状況と広島県の概要 – 統計資料 > 交通事故統計 | 広島県警察)。重度の後遺障害、骨折事故等、交差点における歩行者の事故は重大な結果が生じやすいものです。
本件では、事故前は会社の役員として精力的に活動していた依頼者が、ある日を境に、就労ができなくなり、会社を大きくするという夢を実現する道が絶たれてしまったのです。
これほどまでの重大な影響を与えていながら、適正な賠償がなされていないケースが残念ながら存在することを社会全体が認識する必要があると思います。重症事案であったとしても、損害賠償は自動的に適切な内容で提示されるものではなく、被害者側が現状を正確に保険会社側へ伝えて、それを損害として適切に反映してもらうというプロセスが必要なのです。
今回のケースでは、裁判を含めると解決まで約1年半の期間を要しました。弁護士に相談をしていなければ、1年半の期間を要することなく、すぐに解決していた問題かもしれません。
しかし、結果として当初の示談額は全く適正ではなく、適正な賠償金額の4分の1しかなかったのです。その差額は実に約7500万円にも及ぶものでした。
この差額が生じたポイントは「将来、具体的に発生するかもしれない損害」に対する補償の有無です。
示談のときまでにすでに発生している損害は、被害者としてもイメージしやすいため保険会社に指摘しやすく、賠償に際して抜け漏れが生じにくいかもしれません。しかし、「まだ発生していない損害」や「いまは自己負担していないけど、将来自己負担の可能性がある損害」については、抜け漏れが生じやすくなりがちです。
将来の治療費、将来の介護費、将来の装具交換費等々が典型例です。
これらの損害をきちんと主張立証できるかどうかによって、賠償総額は大きく変わってきます。
本件では、保険会社が裁判で争ってきたため、主張・立証作業の為に地道な作業を要しました。依頼者やご家族が交通事故に向き合い、真摯に協力をしていただけたから、今回の解決に至ったのだと思います。
慰謝料の金額が保険会社の基準と裁判基準で異なることは認知されているかもしれませんが、今回のケースのように、示談案においては将来介護費や症状固定前の付添費等、そもそも損害項目からカットされる場合があることについては、社会的に十分認知されているとはいえないのではないでしょうか。広島市内の事案でもこのような不当な提示がなされていたケースは存在します。
今後の依頼者やご家族の人生のことを考えれば、現行の制度上、被害賠償に限界があることは否めませんが、依頼者やご家族から感謝の言葉を頂戴できたことがせめてもの励みになった印象的な事案でした。
弁護士法人ラグーン 広島支店(広島弁護士会所属)
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